【魂のルーツ】
子供の頃のあなたは、教室のいちばん前で手を挙げる子ではなかったのではないでしょうか。かといって、隅で縮こまっていたわけでもない。
みんなが走り出す方向を、少しうしろから眺めて、それから自分も歩き出す。そういう子だった気がします。
夕暮れの草原を歩く羊を思い浮かべてみてください。慌てず、足元を確かめながら、ひと足ずつ進んでいく。
あなたの魂のいちばん奥には、この歩みがあります。急に駆け出すことをしない。
まず立ち止まって、いまどんな場所にいるのかを見てから動く。無謀という言葉が、いちばん遠いところにある人。
身近な人を大事にする気持ちも、ずいぶん早くから芽生えていたはずです。家のなか、ごく近しい人たちのあいだにいるときの安心感を、あなたはちゃんと知っていました。
外の広い世界に飛び出して名を上げるよりも、手の届く範囲の温かさを守るほうへ、自然と気持ちが向いていく。それは弱さではありません。
守りたいものがはっきり見えている、ということです。
おっとりして見られることも、多かったのではないでしょうか。穏やかで、波風を立てない。
実際あなたは、流れに逆らわずに進む術を、誰に教わるでもなく身につけてきました。無理に勝とうとしない。
ぶつかるくらいなら、いったん受け流して、自分のペースを取り戻す。そうやって余計な消耗を避けてきたのですよね。
不思議なことに、自分の内側をあまり語らないわりに、あなたは人から大きく誤解されることが少ない人でもあります。多くを打ち明けないのに、なぜか「悪い人ではない」と伝わっている。
穏やかな佇まいが、言葉のかわりに何かを伝えているのでしょう。