【魂のルーツ】
子どもの頃、まわりの子が夢中で走り回っているあいだ、あなたは少し離れて、その様子を眺めていたのではないでしょうか。輪に入れなかったのではありません。
入る前に、なぜみんながこんなに楽しそうなのかを、先に確かめたかった。そういう子でした。
凍てつく湖上で数式を描く数学者。これがあなたの魂の姿です。
足元には張りつめた氷があり、その上で、誰に頼まれたわけでもなく、ひとつひとつ筋道を確かめていく。にぎやかさからは遠い。
けれど、そこには確かな手応えがあります。
物事の仕組みを知りたい、という気持ちが、ずっと内側にありました。おもちゃをもらえば遊ぶより先に、どうして動くのかを知りたくなる。
話を聞けば、その話が本当に筋が通っているかを、心のどこかで確かめている。理屈っぽいと言われたこともあったかもしれません。
けれど、それはあなたが世界を雑に受け取れなかった、というだけのことです。
特に、数や順序、目に見えない法則のようなものに、人より早くなじんでいったのではないでしょうか。きちんと積み上げれば必ず答えにたどり着く、という静かな信頼。
それは、移ろいやすい人の気分よりも、ずっと頼りになるものでした。混み合った感情の世界より、澄んだ理屈の世界のほうが、あなたには呼吸がしやすかった。
自分のことも、どこか一歩離れたところから眺める癖があります。怒っているときも、悲しいときも、心のすみに「いま自分はこう感じているな」と見ている冷静な目がいる。
感情に飲まれきらない。その目があったからこそ、あなたは難しい場面でも、取り乱さずにいられました。